https://h.accesstrade.net/sp/cc?rk=0100cw3a00jc5t

「モナ・リザ」はなぜ名画なのか?

名画が心に響かない、ということはありませんか?


世の中には名画と呼ばれる美術作品が古今東西あります。しかし、名画を目の前にしても「なぜこれが名画?」と思うことも多々。

「世間的に名画だから、これは良い作品なんだ」と思ってみても、どうにも納得できなかったり、感動できなかったり……。

それは果たして自分の感性で本当に観ているのでしょうか?

名画=素晴らしい作品ではない


名画とは、表現が豊かである、心の打つような叙情性がある、技術がずば抜けているなどいろいろ言われていますが、名画とは、そういったものが優れているわけではありません。

名画以外にも、技術的に優れている絵画は他にもたくさんあります。さらに言えば、模写も技術的には原画と同じぐらい優れていると言っても過言ではありません。

では、世間で言われている「名画」とは、一体何なのか?一般的に「名画」と言われているものには、以下の3つが基準になっていることが多いと言われています。

1. 歴史性がある作品が、名画になる!

歴史性がある作品とは、長い年月を経ても今なお、歴史の教科書に載っている作品のこと。

社会の荒波に揉まれる中で生まれた作品は、時が過ぎてその当時が歴史になるとともに、その作品も歴史の証人として残る、というわけです。

わかりやすい例が、ウジェーヌ・ドラクロワの《民衆を導く自由の女神》。歴史の教科書で目にしたことのある人が多いと思います。

この絵画は1830年に起きた、フランス7月革命を題材にした絵画で、第二王政復古の政府に反対した共和主義者がパリで引き起こした人民の蜂起を描いています。

今や、フランス革命を語る際に必ず登場しています。

ほかに有名な作品といえば、パブロ・ピカソの《ゲルニカ》。スペイン戦争の悲劇を描いたこの作品も、現代にも通じる作品として遺されています。

こうした作品に多く共通しているのが、「巨匠が描いている」という点。生存時より画家として名を馳せ、政府や国王、教会などから依頼があって絵を描き、有名になっている事例が多いです。

ピカソの《ゲルニカ》の場合、当時すでに有名な画家でスペイン共和国からパリ万国博覧会用の絵をと請われ、思案中だったときに、ゲルニカ爆撃を知り、この絵を描いて大スキャンダルになりましたが、結果的に後世に残る作品になったことは間違いありません。

2. 後世への影響力(時代を超えて、影響を与えている)

前述と似ているようですが、こちらは歴史とは関係なく、美術史あるいは美学の観点から絵を観たときに美術界へ影響を与えた作品、というものです。

たとえば、エドゥアール・マネの《草上の昼食》、ポール・セザンヌの近代美術、ジャクソン・ポロックアンディ・ウォーホルなどの現代美術絵画…。その当時の話題性を担ったものが、後世への影響力が強く、名画として名を馳せています。

ポール・セザンヌ《リンゴと鉢植えの桜草のある静物画》1890年頃、油彩、メトロポリタン美術館

「近代美術の父」であるセザンヌがなぜそう呼ばれているかと言うと、新たな絵の描き方を始めたからだと言われています。

印象派の画家たちが戸外に出て絵を描くようになり、新たな美術旋風を巻き起こしているなか、セザンヌは、上記のような静物画を描きます。

この絵は、リンゴが落ちそうで落ちない…(実際にこの構図でリンゴを置くと、たちまちは崩れてしまう)絶妙な構図を生み出しています。このような描き方から、新たな絵の描き方が模索されました。

また、ジャクソン・ポロックは、「ドリッピング」「ポーリング」などの技法を用いて、現代美術を切り拓いた先駆者として有名です。

彼はピカソの画集を見て「みんな、あいつがやっちまっている!」と悪態をついたという逸話が残っています。

そうやってお互い、影響しあったからこそ、新たな技術・新たな視点が生まれてきたと言えます。

こういった作品の特徴の多くは、「新しい技術・新しい視点」で創られている、ということ。言ってしまえば、その新しい視点をいち早く発見したかどうか、でもあります。

もちろん、その“新しさ”は何でも良いわけではなく、そこに解釈・価値観が埋め込まれているかどうか、が大切になります。

モナ・リザ》はなぜ名画なのか?


レオナルド・ダ・ビンチの《モナ・リザ》は、不敵な笑みを浮かべていて、どこか不穏で「一体なぜこれが名画なのだろう」と言う人が多いと言われています。

実はこの作品において初めて「スフマート」という技法が使われています。この技法は、作品のボリュームなどを増すために透明な層を上塗りする技法で、その色彩の変化が肉眼で見て取れないほどですが、わずかな陰影をつける技法のことです。

その陰影こそが、《モナ・リザ》の絶妙な口元を表現しています。ただ観たままを描くのではなく、表現方法としての技法を用いているという点において、この絵画は名画であると言えます。

この絵が好きか嫌いか、感動するか否かで観ると悩んでしまう人も多いでしょう。美術の価値は感性だけではわからないところもある、というのが現実です。

けれど、なぜ名画なのかを知ることによって、絵の見方が変わり、鑑賞方法が変わってきます。

美術鑑賞には知識が必ず必要とは限りませんが、名画を鑑賞する際にはその背景を知っておくことで、より深い内容でその作品に触れることができます。

名画を無理に好きなる必要はない!


名画を無理に好きになる必要も、無理に感動する必要も全くありません。もっと言えば、名画が感動する作品ではないことが多いもの。

名画と言われる作品を鑑賞する際には、名画と言われる背景を知り、その上で作品を観ることで、より美術に関する知識を増やすことができる、というメリットがあります。

美術鑑賞を新たに始めた!という方は、まず名画や有名な絵を観て、それから自分の好きなジャンルや絵画を探していくとよいと思います。

では、一流名画ではない作品を鑑賞する際には、一体何に気をつけて観れば良いのか。それはまたの機会に……。